則包×中野

西讃が育てたおいりの歴史と文化

香川県の特に西讃地域(高松市より西側)限定の嫁入り菓子「おいり」。
その由来は今から400年以上も前のこと、丸亀初代藩主・生駒親正公の姫君のお輿入れの折り、お百姓の一人が五色の餅花を煎って作った「あられ」を献上したのが始まりとされています。このお煎りものは略して「おいり」と呼ばれ、丸亀発祥、香川県の伝統菓子となっています。今でも、婚儀の折には祝い菓子として多くの方に喜ばれています。

丸亀市では数少ないおいり製造専門の則包商店、則包裕司さん。丸亀市文化観光大使で、丸亀出身のフリーアナウンサー中野美奈子さんとの対談が実現しました。自身も引出物として利用したと言う中野さんが、おいりの魅力に迫ります。

【取材2013年11月】

おいり対談3

中野おいりは子どもの頃の私にとって、スペシャルなお菓子でした。いつも家にあるわけではないんですが、父と母がきれいな格好して帰ってきた後には必ず家にあるという。不思議でしたね。おいりがここだけのものということ、高校卒業後、県外に出て初めて知りました。

則包香川県でも西讃、坂出から西の方が主です。県外では作られていないお菓子です。

中野則包さんはおいりをずっと長い間作られていますよね。

則包僕は3代目でおいりを作り始めて30年。創業は大正初期で100年以上になります。県内でおいりをつくっているところは数えるほどです。

中野則包さんのおいりは、フワフワっと、カリっとした食感と、かすかなニッキの香りがホント変わらないですよね。ほんのりとした甘さで、手元にあるとついつい食べ続けてしまいます。製造方法はずっと同じなんですか?

則包何も変わっていないですね。2代目から受け継いだ方法です。おもちをついたり、切ったりする作業は機械化されたので、時間は短縮できていますが、工程や5~7日間の日数は同じです。

中野5つの色合いもステキですよね。

則包色は黄、緑、紫、ピンク、赤色です。白を多く入れることによって5つの色が引き立ち、色合いが優しくなります。色付けは、着色料を使った蜜でします。全体的に淡く優しい感じを出すために、ごく少量しかいれません。ニッキの味は昔のお菓子の名残かもしれませんね。ニッキ飴とか…。うちは、昔飴を作っていたこともあったようです。

かわいらしい色のおいり
かわいらしい色のおいり

中野できあがったおいりは、この缶に保管するんですか?道具も年代感じるものもありますね

則包はい。おいりは湿気を一番嫌うのでこの缶に。ずっと使い続けているものです。おいりは○グラムではなく、1斗とか7斗といった量の測り方をします。乾き具合によって重さが異なりますからね。

七斗缶
七斗缶に保管する

中野一番こだわっていることは何ですか?

則包お嫁さんが持っていくものですから、かわいいおいりを作りたいなと思っています。毎回いいものを作っているつもりですが、なかなか難しいです。乾かす作業が一番大事ですね。天候に左右されますし、乾き具合で膨れ方が変わり、色や形に影響してきます。加減は手で触った感じ、長年の経験を活かした職人の勘のみで判断します。おいりはおもちをついて乾かして、5ミリ角に小さく裁断して再び乾かします。それを煎ることによって角がとれて丸くなっていくんです。

中野こんな小さな四角のおもちが丸くなるんですね。花嫁道具の一つと言われるおいりには「家族の一員として入って、心をまあるくしてまめまめしく働くのでよろしくお願いします」という意味があるんですよね。

則包今の時代にはちょっと堅苦しい感じもしますがね。でも「まあるい」っていうのは角がなくっていいですよね。昔はお嫁さんが嫁入りの時に近所の人においりを配る風習がありました。最近では、県内、県外でも少しずつ引出物にされる方が増えて来ました。

おいり工程1
おもちをついてのばして乾燥させている様子。重要な工程

おいり工程2
5ミリ角に小さく切ったおもち

おいり工程3
おもちを煎った後。まあるく膨らんでいる

おいり工程4おいり工程5

中野私も引出物として利用させてもらいました。

則包地元の方は、おいりが全国にあると思われている方が多いですね。式場の方などと、丸亀のお城から始まった歴史があるお菓子という話をすると、引出物にいいなって。

中野東京でも物産展や地方の珍しいお菓子というイベント、新橋にある県が出店しているところで売られているだけで、普段はなかなか見かけないです。お土産にもとても喜んでもらえますよ。ただうどん、うちわのようなには皆さんご存じなく。おいりって隠れたアイテムみたいな感じで、レア感がまたいい。

則包初めておいりを手にした県外の方の反応ってどんな感じですか?

中野パッケージを持ってみるととても軽くて「これ何だろう?」って。でも開けてみるとカラフルで「こんなお菓子があるんだねー」って。食べてみると、フワッとなくなる食感や、少し香るニッキの味など、ほかではなかなか味わえないおいしさのようですよ。持ち運びもしやすいし、お土産に最適ですよね。小さな子どもとかは、取りつかれたようにパクパク食べるみたいです。天然のおいりがあればますます喜ばれるのでは?

おいり引き出物2おいり引き出物1
引出物に送られるおいり。豪華な化粧箱に入っている

則包はい。今回丸亀百貨店とのコラボ商品として天然おいりを作りました。以前お客さんからも天然についての問い合わせを受けたことがあり、試したこともありましたが、着色がうまくいかず諦めたことが。今回再チャレンジしました。

中野うまくいきましたか?

則包やはり着色に関して試行錯誤がありました。天然の着色料って、つきにくいんです。普段使っている量と同じではダメで、量を増やしてみました。ほかにもきれいに出る色出ない色、色付きにムラがあったり、きれいに着色料が溶けなかったり、賞味期限の問題などありました。これが作ってみたものです。

中野あらすごい!今のものよりもっと淡い感じで、これはこれでいいですね。天然の雰囲気があるというか。(試作品を食べてみて)味もいつものおいりと同じですね。おいしいです。

則包自然な色合いに仕上がりました。味も1つ1つ違いがありますし、香りもありますよ。

中野本当に素敵ですね。パッケージもいのくまさんのイラストをあしらっておしゃれな感じになって。全国の方にぜひ味わってもらいたいですね。

おいり
天然おいり。自然な色合い。

おいり対談1おいり対談2

丸亀百貨店 天然おいり
則包商店と丸亀百貨店がコラボ開発した商品『丸亀天然おいり』。

則包夫妻
(写真左)奥さんの満由美さん、蜜付けを担当

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